設問1
①に関して
Xには当事者能力はあるものの、訴訟遂行能力はないため、
適切な代理人を有する必要がある。そこで通常、任意的訴訟代理
という形で代表者が代理人として訴訟を遂行することが考えられる。
これは、代表者であれば通常財産管理などを一任されており、また
相手方としても代表者を相手に訴訟を行うほうが訴訟を遂行しやすく、
訴訟経済にかなうために認められている。
しかし、本件では不動産等の重要財産を処分するに当たっては、
構成員の3分の2以上の特別多数の同意を要するものとされており、
更にCをはじめとしたAに賛同しない組合員が多く存在する。
この場合、まず本訴訟の対象物は甲土地であるから、重要財産に該当するものといえ、
特別多数の決議が必要なところ、Cをはじめとした反対者は多く存在することから、
決議的には否決されると考えられる。すると、本件ではAに対して
訴訟遂行を一任されているとは言い難いことから、任意的訴訟代理を
認めるとかえって訴訟経済に反することが考えられる。
よって、①の方法は認められないと考える。
②に関して
まず本訴訟は共同訴訟になるところ、通常共同訴訟になるか固有必要的共同訴訟になるか。
この点、今回の訴訟は甲土地の総有権に関する争いであるから、当事者全員に対し
画一的な判決を下す必要があるため、固有必要的共同訴訟と考えられる。
すると、②の方法では、原告側に組合員全員が参加する必要があるものの、
Cをはじめとする反対者が多く存在することから、原告側に組合員全員が参加することは
考えづらく、統一した判決を下せないことから、訴訟として不適法になるとも考えられる。
しかしこの場合でも、反対者は被告側で参加するという形をとることで、
全員が参加しつつ、画一的な判決を下すことが可能になると考えられる。
そのため、②の方法は適法であると考える。
結論
①の方法は不適法、②の方法は適法と考える。
設問2
重複起訴が禁止されている趣旨に関して
重複起訴が禁止されるのは、同一の訴訟物に対して異なる判断が下ることによる
混乱、及び二重に訴訟を実施することによる負担の増加によって
訴訟経済に反することを防止するためと考えられる。
アに関して
本件訴訟は甲土地の所有権の確認を求めるのに対して、本件別訴は
甲土地の所有権を基にした明け渡し訴訟である。この点、一見すると
訴訟物としては異なっているように考えられる。しかし、本件訴訟も
本件別訴も甲土地の所有権の帰属を対象に行うものであるから、
訴訟物としては同一と考えられる。また、当事者も同一である。
他方で、確認訴訟は形成力がなく、給付訴訟等と比較して
訴訟の解決手段としては劣ると考えられる。そのため、本件では
確認訴訟である本件訴訟より、本件別訴のほうが優先されると考えられる。
よって、本件別訴は適法と考える。
イに関して
既判力は主文の範囲内で、同一の当事者に影響するのが原則とされる。
その点、本件訴訟においてXの請求を棄却する判決がなされた場合は、
甲土地の所有者はXではないことに対して既判力が生ずると考えられる。
そのため、同一当事者の後訴においては、Xは甲土地がXのものである旨は
主張が出来なくなるものの、その他の所有権に属することは
主張が可能である。他方で、Xの請求が容認された場合は、
甲土地の所有権はXに属することに対して既判力が生ずるため、
後訴でYは所有権がY自身に所属することは主張できず、
実質的に棄却されるものと考える。
以上
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